『コロナ禍の「想定外」を、選択と備えで乗り越える』HIUベーシックインカムレポート【12月】


堀江貴文イノベーション大学校(以下、HIU)で5名のメンバーを対象にベーシックインカム実験がスタートした。毎月HIUより10万円が支給され、メンバーはその資金を自身のアクティブな活動の為に使っていく。どう使うかはメンバー次第。果たしてどうなっていくのか!? 毎月レポートを掲載!

 

 

[小見出し]予期せぬ孤独に効いたのは「一手間」だった

2020年の大晦日。コロナ禍という外的要因により、私は東京で一人、年を越すことを余儀なくされました。これは多くの人が経験したであろう「予期せぬ孤独」の一形態です。この状況において人はどのように行動すべきか。私は自分自身を被験者として、一つの小さな実験を行いました。

私が選んだのは、ただデリバリーを頼み、時間をやり過ごすことではありません。池袋の蕎麦屋「美濃屋文右衛門」で、あえて「生麺」の年越しそばを購入するという、一手間かかる選択でした。

この選択が、結果として体験の質を大きく変えました。袋の中に入っていたのは完成品ではなく、「自分で調理する」というプロセスそのものだったからです。沸騰した湯の中で麺をほぐし、箸で8の字を描くように泳がせる。茹で上がった麺を冷水で締める。こうした一連の作業は単なる調理を超えて、五感を使い、目の前のタスクに意識を集中させる「マインドフルネス」の実践になっていました。生麺を茹でる間のほどよい緊張は、未来への不安や過去への後悔から意識を切り離し、「今、ここ」に自分をつなぎ止めるための強力なアンカーとして機能したのです。

そして、その緊張を乗り越えた先に待っていた「美味しい」という結果。それは単なる味覚の喜びにとどまりませんでした。自分の手で小さな困難を乗り越え、目標を達成したことによって得られる報酬感——言い換えれば自己効力感の回復——がそこに伴っていたからです。特に印象に残った海老の天ぷらの美味しさは、この成功体験を象徴する“トロフィー”のように感じられました。

結果として、2020年最後の食事は単なる夕食ではなく、「孤独という状況を、自分の選択と実践によって価値ある時間へ変えられる」という経験として記憶に刻まれました。状況そのものは変えられなくても、その状況下でどの行動を選ぶかは自分で決められます。そして、その小さな選択の積み重ねこそが、日々の幸福感を大きく左右するのだと実感しました。

 

「手伝い」を自己投資に変える

機会は、しばしば予期せぬ形で訪れます。HIUのオンラインコミュニティに投稿された一つの求人は、コロナ禍で急遽ライブ配信に挑むバレエ団からの切実な支援要請でした。

多くの人にとっては「専門外の手伝い」に見えるかもしれません。しかし私には、複数のリターンが見込める自己投資の機会に映りました。参加を即決した理由は二つあります。

第一に、「戦略的な恩返し」です。大学時代、私は舞台芸術の現場に身を置く人々から数えきれない支援を受けてきました。心理学で言う「返報性」の観点からも、受けた恩を返したいと感じるのは自然な反応です。ただ、その恩を当時の相手に直接返す機会は多くありません。であれば、「別の場所で同じように困っている人に返す」という形が現実的です。これはいわゆる「ペイ・フォワード」の考え方であり、支援がコミュニティ内で循環することで、結果として信頼やつながり(社会関係資本)を育てることにもつながります。

第二に、「越境学習による知の獲得」です。私のバックグラウンドは音楽ですが、同じ音楽を用いながら身体表現という別の文脈で成立するバレエは、私にとって未知の領域でした。バレエダンサーは音楽をどのように解釈し、どのように身体の動きへ変換しているのか。こうした問いは、自分の専門領域の前提を揺さぶり、新しい視点や創造性を得るうえで重要です。安全な場所で情報を読むだけでは得られない、現場固有の生々しい知見がそこにあると考えました。

つまり、私が「くるみ割り人形」の配信現場に向かったのは、単なるボランティア精神だけが動機ではありません。過去の支援を未来の信頼へとつなぎ、異分野の知見を自己成長へ結びつけるという目的意識に基づく自己投資だったのです。

一方で、計画どおりに進むプロジェクトは多くありません。むしろ、リハーサルで問題なく動作したシステムほど、本番で想定外の不具合が起きることもあります。みなとシティバレエ団の配信現場で、私はその現実を強く体感しました。

私の担当はZoom配信のチェックでした。リハーサルでは問題がなかったにもかかわらず、本番開始の合図と同時に音声が完全に出なくなったのです。原因の切り分けを試みましたが、複数の機材が絡み合う状況では特定が難しく、現場は一気に緊張感に包まれました。

それでもプロジェクトが致命的に崩れなかったのは、ただ一つ、「予備としてFacebookライブ」を用意していたからです。ここで重要なのは、プランBが単なる代替策にとどまらない点です。プランBの存在は、「プランAは失敗するかもしれない」という健全な前提を現場に与え、突発事態でもパニックを抑え、意思決定を保つための“心理的な安全装置”として機能します。

さらに今回の経験で痛感したのは、トラブルを「原因不明」で終わらせてはいけないということでした。渦中では「配線図がない」「ボタンの意味がわからない」といった表面的な問題が目につきます。しかし、それらは多くの場合、「属人化」という根本課題の症状に過ぎません。つまり、「あの人にしか分からない」という状態そのものが、組織の最も脆弱な部分になってしまうのです。

配線図の整備やラベリングは、その場しのぎの対策ではありません。個人の記憶に依存せず、誰でもシステムを理解し操作できる状態をつくる「知識の外部化」であり、組織のレジリエンス(回復力)を高めるための基本投資です。

「今後、自分の配信では気をつけよう」という個人の学びに留めることもできます。しかし、それだけでは再発防止として不十分です。今回の失敗を言語化し、チーム全体の“組織知”として共有し、同じ問題が起きにくい仕組みへ落とし込む。そこまで到達して初めて、失敗は価値に変わります。本当の仕事は、公演が終わった“今”から始まるのだと感じています。

 

ベーシックインカム生活の内訳:今月のお金の行き先はこちら

今月も、HIUなどDMMオンラインサロン入会継続¥11,000-をはじめ、ブロマガ「堀江貴文のブログでは言えない話」¥880-、クラシック音楽専門音楽配信サービス「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」¥2,035-、知識のNetflixを目指してつくった「D-Lab by メンタリストDaiGo」¥906-、あらゆる領域の映像制作を後押しするオンライン・コミュニティ「UMU TOKYO」¥2,700-、グラフィックデザイン及び動画編集、ウェブデザインのアプリケーションソフトウェアを利用できる「Adobe Creative Cloud」¥5,478-に使用する。

 

レポート執筆者:床次 佳浩 / Yoshihiro Tokonami
https://x.com/MrTokosmusiclab
編集:D-Lab AIチャンネル「D-Lab AI」
https://daigovideolab.jp/ai/landing
校閲:OpenAI「ChatGPT Pro」
https://openai.com/ja-JP/chatgpt/overview/